会社で仕事中のきぃさんから昼過ぎに自宅で電話を受けた。携帯の向こう側から名前を呼ばれ、返事はしたものの、後に続くのは沈黙ばかり。
だけどその沈黙は重たいものじゃ無かったことに疑問を抱いた。携帯越しに伝わるのは何かに戸惑い続けている空気。この状況は前にも一度ある。あの時はとても良くない話だった。今回もそういう話だとは限らないけど、その時の空気とひどく似ている。いきなり衝撃的な話を聞いて、事態を受け止めきれないでいる様子だ。嫌な予感がする。でも私の気のせいかもしれない。努めて明るい声で先を促した。「どうしたん?^^」「(・・;)ぁ、んとね・・・」(何から話そうか・・・)一瞬そう考えたような間があったけど、今度はすぐに言葉が続いた。先ほど仙台の友達から連絡があったこと。その人は自分が中学時代に所属していた陸上クラブの部長だったこと。そのクラブ内で仲良く喋っていた別のある人が、急に亡くなったこと。 (・・・やっぱり死亡話かぁ・・・–;)きぃさんの、ポツリポツリと切れる言葉の合間に私は天を仰いだ。きぃさんが同じ空気をかもし出していた前回は、おばあちゃんの死亡話だった。電話の間中、きぃさんは何回も「良く分からないんだ」と自分の心境を語った。事実をどう受け止めたらいいのか分からず、途方にくれて電話をかけてきたみたいだった。その気持ちは私にも分かる。少し前、同じように突然の訃報を聞いたのは私だ。あの時の死亡原因は自殺だった。今回は車での交通事故が原因らしい。どっちにせよ、同い年の友達が1人、死んだのだ。私は1人、心の片隅でため息をついた。去年はきぃさんの大好きなおばあちゃんが死に、次いで私を小さい頃から可愛がってくれた“おっちゃん・おばちゃん”が死んだ。今年に入ってからは大学の顔馴染みが死に、きぃさんと中学時代を分かち合った友人までが死んだ。この1~2年はそういう年なのかもしれない。私はきぃさんの話を聞きながら目を閉じた。きぃさんも私同様、今は分からなくても分かろうとして後から考えるかもしれない。そうなると気持ちはじわじわと沈んでいく。そうなると仕事に専念できなくなるかもしれない。早く帰って1人で考え込まない状況を作った方がいい。私はネットで仙台へ行く高速バスの空席情報を確認しながら今夜の仕事は早々に切り上げるようきぃさんに話した。(今夜のバイトが無くて良かった・・・)私はその点だけを安堵して携帯を切った。今夜のご飯はどうしようかな・・・。考えながらもため息はこぼれるばかりだった・・・。