――朝。着替えようと思い、いつものようにYシャツをハンガーから取ろうと思ったら、あるべきところにYシャツがなかった。
別のところにかけてあるのかなと思って別のところを見てみてもYシャツはない。そもそもオレの半袖Yシャツは4着しかないため、1週間に1回は洗濯をしないと在庫がなくなってしまう。会社に行く時間が近付いてきてるのでオレも急がなくてはならない。あるのかないのかハッキリしたかったため、オレは条件反射的にゆうに確認してみた。
「ゆう~Yシャツってある~?」
『んーん、洗濯してないから。Yシャツやっぱり足らないよね~』
うん、たしかにないよね、と相槌を打ちながらオレは歩く。のんびりしてる時間はない。向かう先は昨日のYシャツが入ってる洗濯物袋。洗濯する必要のあるものは全てこの中に入れることになっているのでオレはその中から綺麗そうなYシャツを1着取り出してすぐに着始めた。
違和感はすぐに感じた。左肩の方が異様なほどに冷たい。なんで冷たいんだろうと思った瞬間、昨日のダイエットでビショビショに濡れた長袖Tシャツと下着を洗濯物袋に入れてた事実を思い出した。匂いを嗅いでキツくないことを確認し、我慢して着る努力はするもののあまりの冷たさにな~んかイヤな感じ。
「ゆうぅ~冷たいぃ~(><」
助けて~と言わんばかりの悲しい声でゆうに助けを求める。Yシャツが他にない以上、着るしかないのは分かってる。分かってるけど…冷たいもんは冷たいし、それに匂いは感じないとはいえ冷たい原因は昨日の汗だ。オレは冷たいという感覚とイヤだよぉというこの想いをゆうと分かち合いたかった。『週末だから頑張って(><』という言葉を心のどこかで期待していた。しかし…、そんなオレの悲痛な気持ちを汲み取ったはずだったゆうの台詞は、そんな優しいものではなかった。
『クールビズだよきぃさん(^-^*』
あまりの衝撃に突っ込みを忘れてしまうオレ。いやいやたしかに冷たいけどなんか違くないですか?根本的にズレてませんか?「そんなクールビズやだよ」と反論をしながらそんなことを思う。でもゆうはゆうで『クールビズ×2』と言ってオレをなだめる。
なんかひどいなぁと思いながらも朝から笑いを作ってくれたゆうに少しだけ感謝してしまう。Yシャツは数十分の間だけ冷たかったけど、気付いたときには冷たさなんて感じなくなっていた。外は雨で憂鬱だったけど、オレの気分はなぜか晴れていた。